1日は24時間。
そのうちの大半の時間を何かを身にまとって生活をしているわたしたち。
洋服はとてもおもしろい。
全ての女子たちの毎日にちょっとした『にんまり』を洋服で添えられたら。
そんな風に思っているスタイリストであり、ライターでもある筆者の、洋服にまつわるあれやこれやを綴っていくコラムです。
今回は『年齢』と『ファッション』と『私』が仲良くしていくためのヒントを。
イシカワです。
私は服maniaでライターもしているのですが、zootiestylingLABでスタイリストもしています。私がスタイリストを務める、stylingLABとはざっくりというとスタイリングの教室・試せる場所的なところなわけですが、ようするに皆さんの「ファッションにおける悩みを解決する場所」と説明するのが早いかもしれません。 そんな私が綴っていくこのコラム、今のところ不定期ですが連載していきます。 どうぞお見知りおきを。
目次
年齢と洋服と違和感と
自己紹介がてら今回のコラムを書こうと思った一連の出来事をまずは記そうと思います。
私は、どちらかというと定番と言われるものを組みあわせてスタイリングをするのが好きなので、割と物持ちがいい方です。ちなみに今日着ているジャケットも20代の頃に買ったもの。(ただしずっと箪笥の肥やしになっていて活躍しだしたのは去年!)
シンプルな定番アイテムを愛す傾向にあるのでトレンドに流されにくいのか、わりと気に入って同じものを毎年着るのですが、先日去年もよく着ていたネルシャツを着た時の事。
朝出かける前に鏡の前で「ん〜」という違和感を感じました。ジャケットを羽織ってしまえば気にならなかったのですが、会社についていざ上着を脱いだらあら大変。 ジャケットを脱いだ私はダサかったのだ。スタイリストと今名乗ったばかりなのに。致命的だこれはもう致命的。
具体的にいうと、なんかとってもだらしなく疲れた感じに見えてしまう感じ。アサイチなのに。
ちょっとまてよ、ということは「去年と同じ合わせ方だともう着れない」ということなのか。 トレンドがちょっと変わってきたからか、それとも去年と髪形があからさまに違うからか、それとも今の私の目がそれを許さないのか。
・・・・・・・それとも去年よりも1歳年をとってしまったからなのか?
なんていう風に原因を探っておりました。
まぁ原因は私の「手抜き」にあったわけですけどね。 朝忙しいんだもん。
さて、私のダサさの原因はさておき、スタイリングのカウンセリングをすると結構な確率でこの違和感を『悩み』と感じている方がいらっしゃいます。
『悩み』を「悩みじゃないよ~、こんな風にしたら悩みじゃなくなるでしょう?」という風に要するに『解決』をしていくのが私のスタイリストとしての仕事ではあるのですが、それを解決できなかったりする状況が長ければ長いほどとやっぱりどうしてもその『悩み』は実際の悩み以上にネガティブな事になっていってしまうわけで。
ネルシャツにジーンズにスニーカーの私が感じた、年齢を重ねると共に『似合っていたはず』のものが似合わなくなってしまっているという年齢に対して向けられた疑の眼差しとある種の諦めを種類は違えど感じたことがある人は多いのではないだろうか。
実際、友人に聞いてもそう思っている子が多い。
一日の中の大半を何かしらを身にまとって生活をする私たちにとって、『洋服』は想像以上に気分を盛り上げたり盛り下げたりする要因になるもの。 だからこそ、それを解決できずに目を閉じて諦めてしまう人の中にはやっぱりネガティブなものしか残らないのではないのではなかろうか。
年齢を重ねることに対しての『楽しみ』ではなく『諦め』として。
でも、それを『諦め』というネガティブなものにしてしまうのはあまりにももったいない。
なんとかその「似合わなくなったという違和感を感じるのが年齢だけのせいになってしまっているケースが多いかもしれない」という状況を払拭してあげたい。
だって、年齢・ファッション・そして私は、いままでもこれからもずっと一緒になかよくしていくものだから。
ファッション業界で働くプロ達3人に聞いたポジティブなヒント
先にも書きましたが、私たちはそれこそ人生の大半を何かを身に着けて過ごしています。
そして、一人ひとりの性格も体型も、顔も違うからこそ洋服への関わり方は人それぞれ。
中には洋服好きが高じて私のように洋服やファッションに常に関わる職業に就く人もいるわけなのですが、この業界で仕事をしていると、ファッション業界で働いていない方よりもやっぱり洋服と向き合う時間が長いかもしれません。
だからこそ感じることにこの違和感をポジティブなものにするためのヒントがあるかもしれない。
もちろん私もファッション業界で働く一人ではありますが、それは私が感じること。
機会があったらいろいろな人に聞いてみたいと思っていたことでもあったので、さっそくその場を作ることにしました。
月に1回開催しているLAB飲み(stylingLABでお酒を飲みながらゆるくファッションのことについて語るというイベント)にてお話しをうかがいました。
今回お話を伺ったのはそれぞれがファッションに深く携わる世代の違う女子3名。
皆さんにファッションとの関わり方と年齢を重ねるうちに『似合う』が変わっていく問題について伺いました。
そこで私の心に残ったり刺さったりしたプロ達の言葉を記していこうと思います。
『似合うもの』ではなくて『好きなもの』を着るべき
岡田さん
広島でレディースの靴を中心としたセレクトショップ【heelandtoe】(webshop/heelandtoe my precious pagesとrealshop/heelandtoe nonocular tissues)を運営。
素材がもつ素晴らしさに着目し、モノづくりにこだわった商品を展開している
自分が好きなもの、かわいいと思うものを着るべき。 似合ってないと思っていても、身に着けていたらそれは似合うものになるはずだから。
似合うから着るのではなく好きだから着るっていうのが一番だと思う。
『欲しいけど足の形にあっていないから履けない。』っていう人がいるとするでしょう?
「かわいいけど痛いよね」とか。
私は「うん、あなたの足にはあってないと思う。幅もなにもかも。でもね。欲しかったら買ってはいたらいいの。」って言ってすすめるの。
「だいじょうぶ。そのうち似合うようになるし、履いていると慣れてくるからって。」
それを外で言うと怒られることもあるんだけど(笑)、でも私はそれを信じて着たいものを着て、履きたいものを履いているし、やっぱりそれって間違いではないと思うの。ファッションはそうであるべきだと思う。
体型に合うものが果たしていいんだろうか?って思う。
合わないものでも「好きなもの」をなんとか工夫して自分の体に「似合う」ものにしていくのがファッションの楽しさだし、女の子という生き物が欲しているものではないのかな?って私は思う。
「かわいい」「欲しい」「履いてみたい」って思っているのに、似合わないかもしれないとか、痛くなるかもしれないとかというネガティブなものが邪魔をして試せないとかってもったいない。
だからね、年齢が理由になって着たいものが着れないのはもったいない。
着たいものがあるならなおさら。
好きなもの=着たいもの
やっぱり着たいものを着るべきだと思う。『似合うもの』を探すよりそっちの方がずっと楽しいはず。
大丈夫。絶対に似合ってくるから。
歳をとるのって経験値が増えるってこと
信本さん
アパレルメーカー営業職。
子供のころから洋服が好きで、セレクトショップの販売員を経て現職に就く。色々なテイストの商品に触れられるポジションでの仕事のおかげで、自身も色々なテイストの洋服にチャレンジできるようになったと語ってくれた信本さんは20代。
歳をとるのが楽しみでしょうがないんです。 だって、それだけ選択肢が増えるってことですよね。 それってわくわくしかない。
大学を卒業してすぐは、セレクトショップのショップスタッフをしていたんです。
その時はハイブランドを中心に扱う店だったので、店頭に常に立っているようなシュッとした恰好をしていました。
今考えると、「着たいものを着ていた」というよりは、「着なければならないから着ていた」という感覚がすごいある。
それと、「ブランド物=おしゃれ」っていう風に価値観が固定されていたのかもしれません。
4年間勤めて辞めたんですが、「お店の服を着なければならない」というものから解放されてもう今は本当にざっくばらんなテイストを着ます。
今はいろんなテイストの商品を作っているメーカーにいるのもあって、今まで見てこなかったテイストに触れることができるんです。
自分の中の洋服の幅が一気に増えたっていう感じがします。ボーダーなんて着た事なかったんですもん。
だから私今とっても楽しいです。
周りに「ちょっと若くない?」って言われるような恰好も全然平気で楽しんでしちゃってます(笑)
年齢を重ねると着れなくなるものが増えるって聞くけれども、私の中ではその逆なんですよね。
知識が増えるというか、引き出しが増える感じ。
それは洋服だけでなく、仕事においてもおんなじだったりするんですけどね。
今まで着れなかったようなものだったり、知らなかったものが着れるのって本当にワクワクします。
着こなしをアップデートするのはとても楽しいこと
浅野さん
神戸にてレディースアパレルを中心としたセレクトショップwebshop/e-zakkamaniastores,realshop/zootie,fablicaそしてスタイリングサービスzootiestylingLABの運営を行う。
洋服をただの着る『モノ』ではなく『コト』として考えながら企画・製造・販売を手掛ける。
自分が好きなものを着る。 『着こなし』をアップデートしていく。その時の自分にあわせてね。 そうするといつまでも「好き」を着ていられるんじゃないかなって思う。
世の中には「年齢をボーダーラインにやめてしまうものがある」という風潮があるよね。
でもやっぱり「着ない」とか「諦める」とかいうのはもったいないと思うの。
好きなものをずっと着てたのに、自分の年齢にあわないかもってやめちゃったら、それにもう一回チャレンジしようと思った時にはとてもハードルがあがってしまう。
好きで着てたものなのに。
もちろんわたしの中にも「さすがになぁ~」というボーダーラインは存在することはするんだよね。
だからって「着ない」には直結しない。どう思うかっていうと『そのままは着ない。』っていう風になる。
「かわいい!」と思って買ったものはどうやって着ようかな~ってアレンジするもん。
『好きなものは好き』って、いくつになってもアレンジしていくべきなんじゃないかなって思う。
ウチのスタッフでも、時代が変わってもずっと同じスタイルを貫いていた子がいたけど、最近していなかった。聞いたところ「もうさすがにちょっと・・・」っていって、年齢によってあきらめていた子がいたの。
私はその貫く心が好きだから「やめたらもうずっとはけないよ」とはアドバイスしたんだけどね。
もちろんTPOはあるけどね。年齢的には大人だし(笑)
特に幼稚園とか保育園とかの小さいコミュニティーだと「他人の価値観による違和感」というものが気になる時もあるけれども。
でもでも、結果は自分がどう思うか。
「着たい」のか「着たくないのか」ではないのかな?って。
結局は人それぞれ。
似合うものは人それぞれ。
だって私に似合うものがあなたに似合うとは限らないでしょ?みんなに似合うとは限らないでしょ?
それは逆もしかり。
そして、好きなものだって人それぞれ。
私が好きなものがみんなが好きなものとは限らない。
だから私はやっぱり「着たいもの」を「自分に合わせて着こなす」っていうのがファッションで一番楽しいことなんじゃないかなって思う。
おわりに
時代は流れます。 トレンドは流れそして新しい要素を加えて繰り返し流れてくる。
髪も伸びるし、あるいは短くもなる。
肌の色も髪の色も変わるし、体型もしかり。
もちろんなんら変わらない人もいるけれどもそれでも確実に増えるもの。それは年齢です。
マイナスとして考えがちな「年齢」と「ファッション」についてを今回はファッション業界で働くプロたちに 聞いてみました。
聞いてみて思ったのはどなたの発言をとっても、ポジティブな考え方しかなかったということ。
きっと洋服に向き合う時間が長いからこそ導き出されたものだろうその言葉には、とても重みと説得力がありました。
なんだかんだ言っても私にも折に触れて年齢のせいにしたくなるような違和感を感じることが、実はあります。
だから正直をいうと「みんなはどうやって乗り越えてきて、どうやって乗り切ろうとしているのだろうか」というのを聞きたかったのもあるんです。
私のヒントにもなるんじゃないだろうかって。
あなたがシーズン毎に感じたり感じなかったりするその違和感の正体は年齢だけではないはずです。
自分の好きが変わったり、要するに自分の目が慣れていないのもその違和感を感じる原因の一つなのかもしれません。
そのいろいろな変化の中で、着たい着たくないとか、着れる着れないというものが出てくるとは思う。
そしてそれは「年齢のせい」というネガティブなとらえ方をしようとおもったらいくらでもできるもの。
でも忘れてはいけないのは年齢によって着れるものが「減る」ということもあるその裏側には「増える」ということもあるということ。
そう、まさに20年前の私には着こなすことができなかった私が今日着ているジャケットのように。
好きなもの・着たいものが変わる=似合うものが変わる。そう考えるとそれは『洋服』にとっても『私』にとってもとてもポジティブなものです。
まずその一歩が踏み出せたら明日も来年も10年後も、年齢と洋服と私はとても楽しい関係を築いていられるのではないだろうかと思う。